木材店が造る木の家 益子材木店

雨が流していった時間

date 2012.03.19

先週末の雨の中、久しぶりに大子町左貫の戸村信一さんにお会いしまいた。
事務所前に面した県道を挟んだ作業場には、ごらんのようなヒノキの土台が積まれていました。手持ちのスケールで寸法を測ってみると縦横13.0cm、私の後ろから「こうしてここに一ヶ月半置いて、それから12.0cmに仕上げるんですよ」と戸村さん。

ヒノキの土台

下の写真は今から約五年前、2006年11月に行われた弊会森林見学会の時のものです。
この時この場にはごらんのように、戸村さん自身が原木を手当てして戸村さんの手法によって製材された、「戸村製材製」のスギの柱材が山のように積まれていました。やはり原木から13.0cmに製材し、その後約四ヶ月間こうして自然に乾燥させ、そして12.0 cmに挽き直して市場に流通されていました。

戸村ブランドのスギの柱

しかし現在、ここにその戸村ブランドの製品は一本もありません。目の前に積まれてあるヒノキの土台も、すべて他社から支給された原木を支給先の仕様に沿って製材された製品です。

戸村さんがこのように営業方針を変えたのはおよそ二年前。その当時家族をはじめとして全社員と相談し、「会社を存続させるためにはこの選択しかない」と、ギアを落としてハンドルを切った英断だったと言われます。その時からあの「戸村ブランド」の柱は市場から姿を消し、戸村さんは製材品の販売から、製材技術を報酬として得る経営にシフトされました。

窓の外で雨音がささやく小さな事務所の中で、彼とダルマストーブを挟んで約一時間。雨に流されるかのように、大きく変化した時間の流れをこれでもかと痛感しました。帰り際に彼が「これでいいのか…、と悩み考えていると、間違いなく時代から取り残されます。お恥ずかしいことにこの年になって、改めて思い知らされましたよ」と笑顔でそう言われました。

フロントガラスに打ち付ける雨音はあまりにも冷たく、そして過酷な音に聞こえました。

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