木材店が造る木の家 益子材木店

「蛍町」と呼ばれる内蔵がある町並み

date 2013.12.12

あいにくと時折みぞれ交じりの雨降りでしたが、久しぶりにドキドキワクワクする時間でした。とある情報誌に掲載された記事で知り、「これは今見ておかないと」と訪ねました。ところがあまり夢中になって、およそ三時間の滞在で希望する半分の数も訪ね廻ることができませんでした。

増田中町バス停

店舗の入り口から招かれて一間幅の通り土間を奥に進むと、窓からの日差しに鈍く光る磨き込まれた黒漆喰の外壁と、蛇腹五段の土扉が現れます。土扉の上部には左官で大きく家紋が描かれ、この蔵を建てた当主さんの強い意気込みがわかります。
土扉と外壁の腰は「鞘(さや)」と呼ばれる漆塗りの組子で覆われ、その理由は漆喰が傷まないようにとの配慮だそうです。その鞘には場所柄スギを使っているのかと思って目を凝らすと、意に違わずヒバ特有の木目が見えました。

その中に入ります。目の高さに一尺間に並ぶクリとヒバ五寸角の柱と、クロガキの欄間と床柱。見上げると梁間四間のケヤキやマツの梁と、それに乗る桁行七間のスギ磨き丸太の通し桁。その通し桁から左右に伸びる、一尺五寸間に入れられたスギ四寸角の垂木。足下には幅一尺五寸のクリの床板が敷かれます。

この規模の内蔵が一つの町内に45棟現存し、通り一本を挟んで現在15棟が一般に公開されています。一番古い蔵で明治初期、新しいもので築後80年を経ていると聞きました。それらが平成の世となった現在でも、倉庫や住居の一部として使われています。
もちろん各々の蔵によってわずかに仕様が異なります。しかしそのすべてが、木材の適材適所使用を忠実に守り、さらには左官壁仕上げの機能と美しさを十二分に見比べ、そして堪能することができます。

こちらは冬期、国内有数の豪雪地帯です。法規も規制も無いその当時、大工さんと左官屋さんを始めとする職人さんたちが、各自の知恵と経験を駆使して、文字通り風雪に耐える蔵を後世に伝えようと労力を惜しまなかったことと感じました。

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