JR新宮駅から市街地を抜けて、熊野川に沿って走る国道168号線を路線バスに揺られて熊野本宮大社を目指します。道の両側から山が迫り、木のくに紀州を実感できます。
川幅が広い熊野川はこの日水量も穏やかです。それでいて車窓から見える緑の山々は、所々に昨年の台風水害の土砂崩れによる赤い山肌が露わになり、今も残る災害の爪痕が目に痛く映りました。
熊野の山に陽が隠れ始めた夕刻、明朝に本宮大社参拝を控えて川湯温泉の亀屋旅館さんに荷物を降ろしました。木造二階建て、築後80年の老舗旅館です。
私の部屋には女将さんが付いてくれました。平日とあって今夜の宿泊客は四組とのこと。そのせいか部屋に足を運ぶ度に、川湯温泉のこと、前を流れる大塔川が氾濫すること、温泉街には幸いにも後継者が多いこと…など、とても気さくに教えていただきました。
夜が深まり、宿の前を車のヘッドライトがほんの数回通り過ぎる程度。川を流れる水の音が小さく耳に入る静かな一夜でした。
お陰さまで翌朝はご覧の好天、南紀紀行の最終日です。亀屋さん、お世話になりました。