能代から旧国道7号線(奥羽街道)に沿って、二ツ井駅方面に歩くこと約15分。二ツ井郵便局を過ぎ、駅前の信号を商店街に折れてすぐにこの曙食堂があります。
これで営業中です、飲食店によくあるのれんは下がっていません。一見するとごく普通の民家の入口です、これが食堂だと教えてもらわない限りはわかりません。一間開口のアルミサッシに小さく下がった「営業中」のプレートと、入口上部に掲げられた今にも消えそうな「曙 中華そば」と書かれた文字が、かろうじて「ここは食堂なんだ…」と理解できます。
食堂と呼ばれてもテーブル席はありません。カウンター席に丸椅子が九脚。お品書きもその席に改まったものはなく、カウンター前の壁に手書きで札が六枚下げられています。
その六枚あるお品書きの中で、ほとんどのお客さんの注文が「中華そば(600円)」と「チャーシューメン(700円)」です。ここのお店の中華そば、そのチャーシューはサクラ(馬肉)です。
その昔、輸送手段を鉄道や自動車に頼った以前に、深い山からの木材の搬出には馬が使われました。と同時に、山で働く人たちにとって牛や豚より身近にあったサクラ肉は、貴重な肉食材であったと聞きます。その名残で今でもこの地方では、お肉屋さんには牛や豚よりもサクラ肉が幅をきかせて並んでいます。
平日でも、正午前の11時少し過ぎからすでに満席。お客さんの誰もが黙って入ってきて「中華そば」と一言だけ。雪積もる白い北国で、古き良きスギの香りを感じさせるお昼がいただけます。
能代市二ツ井町字三千苅5-38 10時から19時まで TEL:0185-73-2801