木材店が造る木の家 益子材木店

江戸っ子の粋

date 2011.09.05

今をときめくオタクの聖地、JR秋葉原駅から万世橋を渡ってすぐに右折。解体された旧交通博物館前を通り淡路町内に入ると、全国のそば通の聖地「神田藪そば」があります。

今さら私ごときが言うまでもなく、そばと合うあの辛めの汁はもちろん、店内に響く女将さんの通る声、客からの注文を書き留めないお姉さんたち、平日の昼間からひとり味噌を肴にお銚子を傾ける老紳士など。江戸の時代を遙かに超えた現在で、その空間は日々の雑踏を忘れさせてくれる貴重な場所です。

神田藪そば

そばと店内もさることながら、ここでお伝えしたいのは店の敷地を囲んでいる板塀です。
いつもの年の瀬、大晦日の年越しそばを目当てにしたお客さんは、敷地を囲うように作られたその板塀沿いに長い行列を作ります。杢目を浮き出させた秋田スギの広い板、もちろん節(フシ)やキズなどは一切ありません。

材木屋として秋田スギと言われるだけで身構えるところを、ましてそれを屋外の塀に使うという感性は、恥ずかしながら茨城の片田舎で細々と営む貧乏材木屋には到底持ち合わせておりません。百歩譲ってそれを屋内で使うことになったとしても、心の中では「もったいない…」という思いが先に立ちます。都会の師走で寒風吹く中、行列に並ぶお客さんの中でこの板に気がつく人は果たして何人いるでしょう。

大晦日のお昼のNHKニュースは、年越しそばを楽しむ人で賑わう店内が放映されます。それを見る度にあの板塀を思い出し、店主が胸の奥で「どうだ、マイッタカ」と静かにささやく江戸っ子の粋を感じます。

〒302-0122 茨城県守谷市小山386 益子材木店
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